「母さんの声は、僕にしか聞こえない」。五十嵐大によるエッセイ『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えたこと』を、『きみはいい子』の呉美保監督が吉沢亮主演で映画化した本作は、耳の聞こえない両親の元に生まれた「コーダ(CODA)」の少年が、周囲との違いに葛藤し、反発しながらも、母との確かな絆を見出していく感動のヒューマンドラマです。あらすじから魂が震えるネタバレ結末まで徹底的に解説します。

あらすじ

宮城県の小さな港町。五十嵐大(吉沢亮)は、耳の聞こえない両親の元に生まれました。幼い頃の大にとって、手話で会話する母・明子(忍足亜希子)と父・陽介(今井彰人)との生活は当たり前のものでした。しかし、成長するにつれ、周囲の好奇の目や、自分が通訳を担わざるを得ない状況に、大は次第に苛立ちと羞恥心を抱くようになります。

「なぜ自分の家だけ違うのか」。母の過剰なほどの愛情を疎ましく思い、逃げるように東京の大学へ進学し、就職した大。都会での生活の中で、自分の出自を隠し、自立しようともがく大でしたが、ある出来事をきっかけに、自分がこれまで目を逸らしてきた「二つの世界」と、母が抱えていた本当の想いに向き合うことになります。

登場人物

五十嵐大(吉沢亮)

本作の主人公。コーダとして、聴者とろう者の二つの世界の間で揺れ動く。吉沢亮が、思春期の残酷なまでの反抗心から、大人になって母を理解していくまでの長い歳月を、繊細な手話と眼差しで圧倒的な説得力を持って演じています。

五十嵐明子(忍足亜希子)

大の母。耳が聞こえないが、息子への愛に溢れている。忍足亜希子が、表情豊かな手話と体全体から溢れ出すエネルギーで、子を想う母の強さと脆さを体現しています。

五十嵐陽介(今井彰人)

大の父。無口だが、息子を温かく見守り続ける。

ユースケ・サンタマリア & 烏丸せつこ & でんでん

大の成長を見守る祖父母や周囲の人々。

見どころ。呉美保監督が描く「沈黙の中の対話」

本作の見どころは、手話という言語が持つ豊かな感情表現と、呉監督による静謐ながらも力強い演出です。

コーダとしての孤独と誇り

耳が聞こえるからこそ、両親を助けなければならない。しかし、そのことが自分の人生を縛っているようにも感じる。本作は、コーダが抱える特有の葛藤を美化することなく描き出しました。吉沢亮が見せる、母を拒絶した後に訪れる深い後悔の表情は、観る者の胸を激しく揺さぶります。

言葉を超えた親子の絆

「声」は聞こえなくても、そこには確かに「対話」がある。劇中、多くのシーンが手話で行われますが、そこに込められた感情の密度は、どんな台詞よりも雄弁です。特に、終盤の母と大の和解のシーン。静寂の中に響く手話の音が、まるで音楽のように美しく響きます。

ネタバレ注意。東京の空の下で見つけた、母の声

物語の終盤、大は東京での生活の中で、母がかつて書いていた日記を見つけます。そこには、大が生まれた時の喜び、そして彼に苦労をかけていることへの申し訳なさが、不器用な文字で綴られていました。

大は、自分が母を「恥ずかしい」と思っていた時期でさえ、母は自分を世界で一番誇りに思っていたことに気づきます。大は故郷に戻り、母と手話で心からの言葉を交わします。ラストシーン、新幹線で東京へ戻る大。窓の外を見つめる彼の耳には、母が手話に込めた「愛」という名の声が、はっきりと聞こえていました。大は自分のルーツを受け入れ、誇りを持って生きていくことを決意します。

まとめ

映画「僕が生きてる、ふたつの世界」は、家族という最も近い他者を理解しようとするすべての人に贈る、珠玉の物語です。吉沢亮が魅せた、魂の熱演。あなたがもし、誰かとの距離感に悩んだり、素直になれない自分に苦しんでいるなら、ぜひHuluでこの映画を観てください。観終わった後、あなたも大切な人に会いに行きたくなるはずです。

項目 詳細内容
作品名 僕が生きてる、ふたつの世界
主演 吉沢亮
出演 忍足亜希子、今井彰人、ユースケ・サンタマリア、烏丸せつこ、でんでん ほか
監督 呉美保
脚本 港岳彦
原作 五十嵐大『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えたこと』(幻冬舎 刊)
製作年 2024年
ジャンル ドラマ、ヒューマン、実話

本ページの情報は2026年5月時点のものです。最新の配信状況はHuluサイトにて ご確認ください。