「眩しすぎて、見えなかった」。『ジョゼと虎と魚たち』『メゾン・ド・ヒミコ』の脚本家・渡辺あやと、俳優・須藤蓮がタッグを組んだ映画「逆光」は、1970年代の広島県尾道市を舞台に、三島由紀夫に心酔する青年たちの危うくも美しい情愛と葛藤を描いた、耽美的な青春ドラマです。ノスタルジックな風景の中で繰り広げられる、痛烈なまでの純愛と若さの暴走。あらすじから深遠なネタバレ結末まで徹底的に解説します。

あらすじ

1970年代、真夏の尾道。大学に通う晃(須藤蓮)は、夏休みを利用して帰省していました。彼の傍らには、大学の先輩であり、晃が密かに想いを寄せる吉岡(中崎敏)の姿がありました。晃は、三島由紀夫の文学を地で行くような、知性と野性を併せ持つ吉岡に強く惹かれていました。

二人は尾道の美しい風景の中、文学や哲学を語り合い、濃密な時間を過ごします。しかし、晃の幼なじみである文江(富山えり子)や、吉岡が興味を示す女子大生のみーこ(木越明)が加わることで、二人の平穏な関係にひびが入り始めます。晃の純粋すぎる愛は、次第に独占欲と嫉妬へと変質し、真夏の陽光の下で残酷な崩壊へと向かっていきます。

登場人物

晃(須藤蓮)

本作の主人公。三島由紀夫を心酔し、自身の美学を貫こうとする青年。須藤蓮が監督を兼任しながら、若さゆえの過剰な自意識と情熱を、剥き出しの演技で体現しています。

吉岡(中崎敏)

晃が憧れる大学の先輩。自由奔放で掴みどころのない魅力を持つ男。中崎敏の、静かながらも圧倒的な存在感が、晃(そして観客)を翻弄します。

文江(富山えり子)

晃の幼なじみ。彼の変化を敏感に感じ取り、寄り添おうとする。富山えり子の、包容力のある芝居が物語にリアリティを与えています。

みーこ(木越明)

吉岡が興味を持つ女子大生。木越明の、無邪気さと危うさが同居した存在感が物語のバランスを揺さぶります。

見どころ。渡辺あや脚本×須藤蓮監督の化学反応

本作の見どころは、徹底してこだわり抜かれた1970年代の空気感と、官能的な映像美です。

尾道の美しいロケーションと質感

坂の街・尾道の古い町並みや、煌めく海。フィルム映画のような質感で捉えられた風景は、観る者を一瞬にして50年前の夏へとタイムスリップさせます。光と影の使い方が非常に美しく、タイトルの「逆光」が象徴する「見えそうで見えない真実」を映像で表現しています。

文学的な台詞と耽美的な世界観

渡辺あやによる、文学的でいて生々しい台詞の応酬。三島由紀夫の『真夏の死』などを彷彿とさせる、美しさと残酷さが隣り合わせの世界観は、近年の日本映画にはない独自の輝きを放っています。若者たちの青臭くも高潔な精神のぶつかり合いは必見です。

ネタバレ注意。崩れ去る美学と、夏の終わり

物語の終盤、晃の吉岡への想いは限界を超え、決定的な亀裂を生みます。吉岡を自分だけのものにしたいという渇望が、晃を極端な行動へと走らせますが、それは皮肉にも吉岡との永遠の決別を意味していました。

衝撃のネタバレですが、晃が大切に守り抜こうとした「美学」は、現実のドロドロとした嫉妬の前に呆気なく崩れ去ります。吉岡は去り、晃は一人、尾道の街に取り残されます。結末のネタバレですが、ラストシーン、逆光の中に佇む彼の姿。それは、眩しすぎた青春という季節の終わりと、取り返しのつかない喪失を象徴していました。熱病のような夏が過ぎ去った後、彼に残ったのは、冷徹な現実という名の長い影でした。

まとめ

映画「逆光」は、流行に左右されない、純度の高い芸術性を備えた傑作青春ドラマです。須藤蓮と渡辺あやが創り上げた、この「美しき怪物」のような作品。あなたがもし、心の奥底に眠る、かつての熱病のような記憶を呼び覚ましたいなら、ぜひHuluでこの映画を観てください。観終わった後、あなたも自分の過去にある「眩しすぎた瞬間」を、そっと思い出しているはずです。

項目 詳細内容
作品名 逆光
主演 須藤蓮
出演 中崎敏、富山えり子、木越明、三村和敬、河本清順 ほか
監督 須藤蓮
脚本 渡辺あや
製作年 2021年
ジャンル ドラマ、青春、文芸

本ページの情報は2026年5月時点のものです。最新の配信状況はHuluサイトにて ご確認ください。